HOME > WEB MAGAZINE > Books On The Table #4

堀江敏幸さんの本をはじめて開いたのは3年前。
400頁を超える大長編にもめげず読み終えたときには、
その静謐な文体と一瞬一瞬を逃さない丁寧な描写にしみじみと感動し、
忘れられない1冊となりました。


作家を新しく知るたびに読む喜びが増えるのはもちろんのこと、
その作家ごと気に入られるのはなお嬉しいものです。

コーヒーにまつわる本ときいて真っ先に浮かべるのは、そんな堀江敏幸さんの1冊です。
登場人物は、別れてしまった家族の行方を探している男と探偵とその助手。
かといってハラハラドキドキな推理小説ではまったくなく、
3人のとりとめのない会話でゆるやかにストーリーは進みます。
会話の合間に交わされるのが手軽なインスタントコーヒー。
ほんの1杯1口で小難しさも堅苦しさもやわらぎ、緊張のほどけるのがわかります。
話す人はもっと話したくなるし、読む人はもっと読みたくなる。
漂いながらも連なる3人の言葉に耳を傾けていたら、
なんでもない会話こそ互いを強く繋げるのだと気付きました。

ふと本を閉じれば表紙ににじむ丸いしみ。


持ち上げたコーヒーマグの存在をそこに見つけ、無性に誰かと話したくなるはずです。