HOME > WEB MAGAZINE > Books On The Table #2

台所の片隅に置かれたコーヒーミルを憧憬の念で眺めていたこどもの頃。
長いハンドルを回せばリズミカルな音が響き、部屋中に深い香りが漂います。
その先の真黒な飲みものは、おとなだけのお楽しみだったのだけど、
木製のミルを触るだけでじゅうぶんに満たされたものでした。


さて、この本で大泥棒のホッツェンプロッツが狙うのは、
そんな手挽きのコーヒーミルです。
おばあさんが愛おしく使っていた特別なコーヒー挽きを
ホッツェンプロッツはいとも簡単に奪ってしまいました。
そしてはじまる追走劇。
「コーヒー片手に読書でも」と開くとすぐにのめり込み、
次へ次へと読み進めてしまうはず。




作者のプロイスラーは小学校教師でもあり、物語中のこどもたち、
カスパールとゼッペル(外国のおはなしは登場人物名からして心弾みますね)を
かわいらしくも立派に描きあげます。


皆から怖れられる大泥棒でさえどこかマヌケでユーモラス、
悪者もけっして憎めないのは作者自身のやさしさからでしょう。
児童文学には安らぐ読後感があり、読めば読むほど心豊かになる気がします。


さあ、ひといきに読み終えたら、豆から挽いたコーヒーをもう一杯どうぞ。